TATタンパク質[TAT protein]

  葉緑体内には,その進化的起源がシアノバクテリアに近い原核生物だったことを反映して,原核生物時代のタンパク質輸送システムが保存されている.大腸菌では,モリブドプテリン,鉄硫黄クラスター,ニッケル鉄センターなどのリガンドを結合したペリプラズムタンパク質の細胞質膜透過は,TATタンパク質が構成する細胞質膜のトランスロケーター(膜透過装置)によって担われる.このトランスロケーターは1回膜貫通型膜タンパク質のTatAとTatB, 6回膜貫通型膜タンパク質のTatCから構成される.葉緑体のチラコイドにも, TatAホモログのTha4, TatBホモログのHcf106, TatCホモログが存在し,酸素発生複合体の23 kDa タンパク質, 17 (18)kDaタンパク質などのΔpHのみを必要とするチラコイド膜透過に関与する.TATタンパク質による細胞質膜,チラコイド膜透過経路の基質は,一般にそのシグナルペプチドにツインアルギニンモチーフと呼ばれる連続するアルギニン残基を有する.TATタンパク質から成るトランスロケーターによる膜透過に際して,基質タンパク質側はリガンドが解離したり,高次構造がほどける必要がないらしく,その膜透過の分子機構に興味がもたれている.バクテリア由来のTatA,TatB,およびTatCに関しては、個別の立体構造も判明しているが、それらがどのように協同的に高次構造を保ったままの基質タンパク質の膜透過をおこなっているかは、まだ分かっていない.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:29