Secタンパク質[Sec protein]

  葉緑体内には,その進化的起源がシアノバクテリアに近い原核生物だったことを反映して,原核生物時代のタンパク質輸送システムが保存されている.大腸菌などの細菌では,多くの分泌タンパク質の細胞質膜透過は,sec遺伝子がコードするSecタンパク質が構成する細胞質膜のトランスロケーター(膜透過装置)によって担われる. Secタンパク質には,分泌タンパク質が通過するチャネルを構成するSecY, SecE, SecG, ATPの加水分解のエネルギーを利用して分泌タンパク質を細胞質ゾル側からチャネルに挿入するSecA,チャネルからペリプラズムヘのリリースに関わるSecD, SecFなどがある.葉緑体内部にも,SecA, SecY, SecEが存在し,プラストシアニンや酸素発生複合体の33 kDa タンパク質などのチラコイドタンパク質のチラコイド膜通過に関わることが示されている. Secタンパク質が関わる経路によりチラコイド膜を通過するためには, SecAが利用するATPが必要であり,大腸菌では細胞質膜のΔμH+,葉緑体ではチラコイド膜のΔpHが膜透過を促進する.また, Secタンパク質から成るトランスロケーターのチャネルを通過するためには,基質タンパク質は高次構造がほどけなければならない.したがってリガンドの結合などによって高次構造が安定化したタンパク質は,一般にこの経路でチラコイド膜を通過することはできない.最近、葉緑体内包膜に第二のSec輸送装置が存在している事が報告され、ストロマ側から内包膜へのタンパク質の組み込みに関与している可能性がある.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:27