D1タンパク質合成[D1 protein synthesis]

  D1タンパク質をコードするpsbA遺伝子は,高等植物と藻類では葉緑体内で,シアノバクテリアでは細胞質内で転写,翻訳される.翻訳はチラコイド膜表面(高等植物ではストロマチラコイド表面)に結合したポリソーム上で進行し,新生ペプチド鎖はチラコイド膜に挿入され,成熟タンパク質同様の折りたたみ構造を形成する.ペプチド鎖の伸長と光化学系Ⅱの構築は共役して進行するが、その過程については新規な光化学系Ⅱ合成経路と光化学系Ⅱ修復経路の間で異なる点がある。新規な光化学系Ⅱ合成経路では、D1タンパク質の新規合成後、D2タンパク質と共に反応中心コアの形成、新規光化学系Ⅱの構築が行われるのに対し、光化学系Ⅱ修復経路では、部分的な光化学系Ⅱ解体を受けCP43が外れたRC47複合体と呼ばれる複合体上で、損傷を受けたD1タンパク質の分解/新規ペプチド鎖の伸長が行われる。その後、新生D1タンパク質のC末端延長配列がプロセシングされ,成熟タンパク質となる.D1タンパク質の転写,翻訳はともに光で促進されるが,D1タンパク質の合成は高等植物では翻訳段階で,シアノバクテリアでは転写段階で調節される.高等植物では主に葉緑体内のATP含量で翻訳が調節され, ATP含量が低下すると翻訳開始とペプチド鎖の伸長が抑えられる.強光下ではD1タンパク質の合成が抑制されるが,一部のシアノバクテリアでは一過的に異なるD1タンパク質アイソフォームの合成が誘導される.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:15