色素体の内包膜を横切るジカルボン酸輸送には複数種の輸送体が関与する.それらの中で,ジカルボン酸の交換輸送を行う輸送体の一つとして同定された.OMTまたはDiT1と略記される.もう一つのジカルボン酸交換輸送体はジカルボン酸トランスロケーターと呼ばれ(DCTまたはDiT2と略記),両輸送体は基質特異性が異なる.すなわち,OMTがアスパラギン酸やグルタミン酸以外の2-オキソグルタル酸,リンゴ酸,オキサロ酢酸,コハク酸,フマル酸などのジカルボン酸を交換輸送するのに対して,DCTはアスパラギン酸やグルタミン酸を含むジカルボン酸全般を交換輸送する.両輸送体とも12個の膜貫通領域をもち,共通の祖先遺伝子から分岐進化したと推定されている.
色素体のOMTとDCTは協調して働き,炭素代謝系と窒素代謝系を結びつける役割を担っている.すなわち,光呼吸あるいは同化的硝酸還元で生じたアンモニアをグルタミン酸に固定する色素体内のアンモニア同化(グルタミン合成酵素 GS - グルタミン酸合成酵素 GOGAT)系へ,炭素骨格の2-オキソグルタル酸をOMTが供給し,生じたグルタミン酸をDCTがサイトソルへと排出している.
OMTは,オキサロ酢酸に対する親和性が他のジカルボン酸に比べて高く,リンゴ酸-オキサロ酢酸シャトルにおけるオキサロ酢酸/リンゴ酸トランスロケーターとしも機能していると考えられている.
ミトコンドリアにも2-オキソグルタル酸/リンゴ酸トランスロケーターが存在するが,6個の貫通領域をもち,構造が大きく異なる.