逆電子移動[back electron transfer]

  電荷分離状態から電荷が再結合して元の状態に戻ること.光合成系では,光電子移動によって生成した電荷分離状態を利用して,高効率で光エネルギーを化学エネルギーに変換している.しかし,人工系では電荷分離状態からの逆電子移動か起こり,光エネルギーは熱エネルギーとなって散逸してしまうので,人工光合成システムを構築するためには,逆電子移動反応をいかにして抑えるかが重要な課題となっている.天然光合成系における初期電子移動反応では,正方向への電子移動のエネルギーギャップは0.10~0.15eVのごく小さい値であり,マーカス理論から電子移動速度はほぼ最大になっている.それに対し,逆方向のエネルギーギャップは約1.3eVと大きな値であり,マーカス理論の逆転領域に対応するため逆電子移動が抑えられていると考えられている.また,光合成反応中心では段階的電子移動が起こり,電荷分離状態の距離を増大させることによって,逆電子移動を抑制している.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:34