脱窒素作用(脱窒)[denitrification]

  細菌が酸素の少ない微好気か酸素のない嫌気条件で硝酸イオン,亜硝酸イオンを異化的に還元し最終的に亜酸化窒素ガスや窒素ガスとして放出する反応をいう.反応は, NO3-→NO2-→NO→N2O→N2の順に進み,それぞれの中間体が嫌気呼吸の最終電子受容体となり,それぞれの呼吸電子伝達系でATPが生成される.したがって,脱窒素作用(脱窒)は硝酸呼吸にさらに亜硝酸呼吸一酸化窒素呼吸,亜酸化窒素呼吸が加わった連続した反応といえる.亜酸化窒素呼吸系が欠失しN2Oを放出する細菌も多く,その場合も脱窒素作用(脱窒)と呼ぶ.一般に毒性のあるNO2-, NOは細菌細胞内で速やかに還元され,中間体としては放出されない.4つの還元反応の酸化還元電位は比較的高く,ATP生成効率は比較的高い.それぞれの呼吸末端還元酵素に関しては,硝酸レダクターゼはモリブデンタンパク質,亜硝酸レダクターゼには銅タンパク質またはシトクロームcd1タンパク質の2種があり,一酸化窒素レダクターゼはシトクロームbcタンパク質,亜酸化窒素レダクターゼは銅タンパク質である.4つの呼吸系の分子生物学的研究も進んでいる.脱窒素(脱窒)細菌は,海洋,湖沼など至るところに生息し,自然界の窒素循環に,また地球環境保全に大きな役割を果たしている.一方,地球温暖化ガスの一つである亜酸化窒素の生成に脱窒素(脱窒)細菌が一部関わっているといわれる.脱窒素作用(脱窒)をもつ生物はほとんどが細菌であるが,最近,ある真菌(カビ)にその活性があることが報告された.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:39