硫黄代謝[sulfur metabolism]

  植物において硫黄代謝は以下のいくつかの局面において重要である.まず,硫黄を含んだ一次代謝産物(システイン,メチオニン,グルタチオン,ビタミン,補酵素,貯蔵タンパク質)生産のための主要元素としての役割がある.また,グルタチオンチオレドキシンを介して生体内の酸化還元反応に深く関わっており,さらに様々なストレスを緩和する分子として重要である(たとえば,生体異物の解毒のためのグルタチオン,重金属耐性に関わるフィトケラチン,浸透圧防御物質としてのコリン硫酸エステルなど).さらには,二次代謝産物として重要なものも多く(たとえば,シロイヌナズナのフィトアレキシンであるカマレキシン,アブラナ科植物のグルコシノレート,ネギ属植物のアリイン類など),これらは生態化学物質としての役割が考えられている.この硫黄代謝はいくつかの段階から成る.まず,硫黄源のもとである硫酸イオンの吸収と輸送,次に硫酸イオンの還元とシステインへの同化である.硫黄代謝においてはシステインが重要な最初の同化産物であり,その後システインを経て様々な含硫黄化合物に変換される.たとえば,システインから3ステップを経てメチオニンが合成され,2ステップを経てグルタチオンが合成される.しかし,その他の含硫黄化合物の生合成や代謝経路,それに関わる酵素や遺伝子についてはまだ解明されていないものも多い.また,含硫黄化合物の分解と再利用も重要な問題であるが不明の点が多い.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:31