生態学的ピラミッド[ecological pyramid]

  一つの生態系における構成生物を栄養摂取の特徴別に分けるとき,植物は光合成によって有機物を自ら生産するので生産者と呼ばれる.これを摂食する草食動物・昆虫は一次消費者,一次消費者を摂食する肉食動物・昆虫は二次消費者と呼ばれる.同様に三次,四次消費者も存在する.またこれらの生物の死体・老廃物を摂食して分解するカビなどの微生物や土壌昆虫などを分解者と呼ぶ.これらの生物の関係の総体を食物連鎖と呼び,それによって生態系内において物質の循環が完結し,エネルギーが流れている.生産者,一次・二次・三次消費者という栄養段階の順に個体数や生物量を並べると,ピラミッド状になる場合がある.すなわち,生産者の個体数や生物量が最も多く,消費者は上位になるほど少なくなる.しかし,木にケムシが群がる場合など,例外も多い.一方,各栄養段階の順にエネルギーの流れを並べた場合は必ずピラミッド状になる.これは,他の生物などから物質とエネルギーを摂取して自分の体に同化する際の転換効率が100%には決してならないからである.
 消費者の摂食量に対する総同化量の比である同化効率は,肉食で90%,昆虫食で70~80%,草食では15~70%である.実際に生物量となるのは,総同化量からさらに運動や体の維持のためのエネルギーを引いた純生産量であり,陸上動物ではその効率は10%程度となる.植物における生産効率は,太陽エネルギーのうち光合成有効放射量と,純一次生産のエネルギー量との比で表され,地球全平均で0.12%程度にすぎない.さらに一次消費者による生産者の消費率は,平均で陸上で7%,海洋で36%と推定されている.このような各栄養段階間でのエネルギー転換効率の低さによって消費者の栄養段階数は制限されており,陸上生態系で普通3~5程度,水圏生態系では10以下とされている.

ecological pyramid.png

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:17