活性酸素種消去系[scavenging systems of reactive oxygen species (ROS)]

  酸素傷害の抑制には,活性酸素種を生成したその場で標的分子と反応する前に速やかに消去することが必要であり,活性酸素種の生成サイトと消去系は互いに近接して局在している.スーパーオキシド(O2-)は自発的不均化反応(2O2- + 2H+→H2O2+O2)によって中性pHでは数秒で消滅するが,スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)はこの反応を促進し,O2-の細胞内濃度を10-4以下に低下させる.カタラーゼはH2O2を不均化反応(2H2O2→O2+2H2O)で消去する.カタラーゼは高濃度のH2O2を速やかに消去できるが,生理的濃度(~10-6 M)のH2O2の消去速度は遅い.カタラーゼはペルオキシソーム,グリオキシソームに局在し,葉緑体には存在しない.酸素傷害を抑制できるようにH2O2濃度を低下させているのは,電子供与体(AH2)によるH2O2還元を触媒するペルオキシダーゼ反応(H2O2+2AH2→2AH + 2H2O)である.植物,真核藻類ではアスコルビン酸がAH2であるアスコルビン酸ペルオキシダーゼが葉緑体,ミトコンドリア,ペルオキシソームなどに,H2O2消去に必要なアスコルビン酸を再生する系とともに局在している.ヒドロキシルラジカル(・OH),一重項酸素分子(1O2)は細胞内での寿命,拡散距離がO2-より数桁短く,・OH,1O2を細胞成分と反応する前に大きな分子である酵素によって消去できないため,低分子の抗酸化剤が消去している.脂質のヒドロペルオキシドはグルタチオンペルオキシダーゼによって還元,消去される.ラジカル,ペルオキシドラジカルの大部分も抗酸化剤によって消去され,ラジカル連鎖反応,O2-生成を抑制している.有機ラジカルを消去する酵素としてモノデヒドロアスコルビン酸レダクターゼが機能している.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:34