水利用効率[water use efficiency]

  植物によって使われた水の量に対する生産された乾物の重さの比が水利用効率(乾物生産に対する水利用効率)として農学などの分野で広く使われる.この水利用効率の逆数を要水量という.生産された収量に対する使われた水の量(収量に対する水利用効率)で表されることもある.1 gの有機物を同化するために,樹木では200 gから400 g,草本では400 gから700 gの水が必要になる.
 葉レベルでは,光合成によるCO2吸収速度と蒸散速度の比率として水利用効率が定義されている(光合成速度に対する水利用効率).湿度が低い,あるいは土壌水分が不足しがちな条件では,葉から失う水分(蒸散)や,水分を獲得するための根系への資源投資が重要である.失う水分(E)をコスト,光合成(A)をベネフィットと見なせば,ベネフィット/コスト比(A/E)を乾燥条件への適応の指標の一つとみることができる.光合成速度に対する水利用効率は,蒸散速度と光合成速度に影響する内的・外的要因によって影響を受ける.たとえば,空気湿度が低下すると,蒸散速度が高くなることにより水利用効率は低下する.空気湿度がほぼ一定の条件では,水利用効率は,水ポテンシャルが低下し気孔開度が小さくなると,主に蒸散速度の低下によって高くなるが,さらに水ポテンシャルが低下すると光合成速度も大きく減少するため,水利用効率は減少する.乾物生産に対する水利用効率も土壌水分によって異なり,土壌水分がやや減少すると高くなり,さらに土壌水分が減少すると低くなる.また,いずれの水利用効率も種によって異なり,C4植物3植物に比べて高いことはよく知られている.
 水利用効率は水消費量,乾物重,葉のガス交換速度などの従来の直接的測定で得るのが一般的であるが,一部の研究では,葉の中の13Cの比率を水利用効率の指標としている.葉の周囲の大気飽差(VPD)が一定ならば,水利用効率と葉内細胞間隙CO2濃度(Ci)は負の関係となる. 13Cの比率はCiが低いほど多くなるため,炭素13Cの比率が多いほど水利用効率が高いと見なすことができる.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:48