段階的電子移動[stepwise electron transfer]

  反応中心での初期電荷分離反応後に引き続いて起こる電子受容体への電子伝達のこと.光合成系では,反応中心におけるスペシャルペアクロロフィルの光励起から起こるピコ秒オーダーという非常に速い光誘起電子移動により,スペシャルペアと一次電子受容体の間に電荷分離状態を形成する.その後,二次電子受容体への電子移動が数十~数百ピコ秒で,さらにそこから三次電子受容体への電子移動がナノ秒~マイクロ秒で起こる,個々の段階はエネルギーギャップの最適化によって逆電子移動が抑えられると考えられているが(→マーカス理論),同時に,光合成系では,このような段階的電子移動を起こすことにより,電荷分離状態の距離を増大させ,逆電子移動を起こりにくくすることによって,電荷分離状態を長寿命化する巧妙なシステムを発展させていると考えられている.人工系においても,複数の電子受容体を酸化還元電位の序列で,光増感錯体に連結した化合物が多数合成され,逆電子移動を抑制して長寿命の電荷分離状態を達成できることが証明されている.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:01