励起子型励起移動[exciton-type excitation transfer]

 励起子の項目で示すように,一つの励起子状態中では励起移動の概念は適当でなく,それが覆う分子集合体中の各分子上で励起が観測される確率の分布が各瞬間に存在するのみである.励起子をもつ分子集合体中の1分子のみをある瞬間に励起できたとき,励起エネルギー移動の項目において分子対の場合で示すように,その励起は分子集合体内を行きつ戻りつ振動し,遷移確率の概念では記述できない.この場合,分子集合体がもつすべての励起状態をゼロでない確率の分布で最初の瞬間に励起したことになっている.励起エネルギー移動における供与体と受容体の少なくとも一方が励起子を励起状態としてもつ分子集合体である場合,供与体・受容体間の平均距離が分子集合体のサイズに比べて十分大きくない場合には,励起移動をひき起こす相互作用が十分弱く,励起移動が(確率過程として記述できる)インコヒーレントな遷移である場合でも,励起移動確率はフェルスター型励起移動の場合におけるフェルスター公式では記述できない.励起移動は光禁制な励起子状態を遷移の始状態としても終状態としても起こりうる.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:16