光化学系Ⅱ標品[PSII preparation]

  光化学系Ⅱの機能を持つ生化学的な標品は,反応系のレベルに応じて次の(1)~(2)の3種類に大別される.
  (1)光化学系Ⅱ反応中心複合体:D1タンパク質およびD2タンパク質を中心に構築され一次電子供与体(P680)と一次電子受容体(フェオフィチンa)との間の初期電荷分離反応の活性を持つ.この複合体にはシトクロムb559が結合している(→ D1/D2/シトクロムb559複合体).
  (2)光化学系Ⅱコア複合体:D1およびD2タンパク質を中心とする光化学系Ⅱ反応中心複合体に,反応中心の近傍で機能する2種類の中心集光色素タンパク質複合体(CP47およびCP43)が結合した標品.この複合体がマンガン安定化タンパク質(33 kDa, PsbOタンパク質)を結合してマンガンクラスターを保持している場合には,水からQAへの電子伝達系の機能のすべてを遂行することができる(酸素発生能のある光化学系Ⅱコア複合体).標品によりマンガン安定化タンパク質以外の光化学系Ⅱ表在性タンパク質が結合している場合もある.なお,温和な条件下で調製した光化学系Ⅱコア複合体には上述の成分以外に多数のタンパク質が結合しているが,その機能的な役割とその普遍性は十分には確立していない.
  (3)光化学系Ⅱ膜標品:Bertholdらにより調製された“BBY粒子”が代表例として知られている.葉緑体のグラナ部分に相当するチラコイド膜断片で,高い酸素発生能をもつ.膜の成分に加えて,光化学系Ⅱ表在性タンパク質のすべてを保存している.酸素発生の機能をもつ光化学系Ⅱコア複合体と,周辺集光色素タンパク質複合体(緑色植物の場合であれば,クロロフィルa/bタンパク質複合体(LHCII))を含み,光化学系Ⅰを含まない.なお,上記以外にも, CP43を欠く光化学系Ⅱコア複合体など,解体の程度と生物種に応じて種々の光化学系Ⅱ標品がある.(→D1/D2/シトクロムb559複合体,光化学系Ⅱコア複合体,光合成電子伝達系,グラナチラコイド)

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:36