光化学系Ⅰ一次電子受容体[PSI primary electron acceptor]

  A0と略称される.初期電荷分離反応において,光化学系Ⅰ反応中心クロロフィルであるP700から最初に電子を受け取る電子受容体をいう。酸化還元電位は約-1,000 mV,690 nm付近に吸収をもつクロロフィルaである. P700とA0の間の電子の授受により,P700+-A0-が形成されてでたイオン対を初期電荷対(primary radical pair)と呼ぶ. この初期電荷分離の速度は数ピコ秒(ピコ=10-12)である.P700から受け取った電子を30~40ピコ秒で次の電子受容体A1であるナフトキノンに渡す.A1として働くナフトキノンは生物種により異なり,フィロキノン,3'-モノヒドロキシフィロキノン,もしくはメナキノン-4である.3'-モノヒドロキシフィロキノンが主要なナフトキノンの場合は,10%程度のフィロキノンをもつことが多い.ナフトキノンを還元状態にしたとき,またはナフトキノンを抽出除去した場合は,電子はA0より先に進めず,50ナノ秒(ナノ=10-9)ほどでP700+と再結合する.光化学系Ⅰ一次電子受容体のクロロフィルaは次の電子受容体ナフトキノンと共に,電子伝達体配列の中心軸(P700とFXを結ぶ軸)に対して対称的な位置に2分子存在している.この両者ともA0およびA1として働いている.A0アクセサリークロロフィル(A)と二量体に近い配置をとっているため,そのα帯吸収が長波長側にずれ,690 nm付近に吸収をもつようになると推定される.各々のMg原子はPsaAまたはPsaBのメチオニン残基の硫黄原子と配位結合している.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:20