低温耐性[cold tolerance]

  低温傷害を受けない形質を一般に低温耐性と呼ぶ.低温耐性の植物には,低温傷害の初期過程が起こらない低温非感受性(chilling-insensitive)植物と,低温傷害の初期過程が起こってもその後回復できる狭義の低温耐性(chilling-resistant/chilling-tolerant)植物が含まれる.両者は,低温耐性の分子機構を考えるうえで区別される.植物の低温耐性と葉緑体のリン脂質ホスファチジルグリセロール(PG)の不飽和分子種の割合の間には正の相関関係があるが,これは,低温光阻害で分解する光化学系Ⅱ反応中心のD1タンパク質の修復過程がPGの不飽和分子種の存在で促進されるためである.PGの不飽和分子種の割合を決定するのは,葉緑体のグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)である.低温耐性植物(ホウレンソウ,シロイヌナズナなど)由来のGPATを低温感受性植物(タバコ,イネなど)で過剰発現させると,PGの不飽和分子種の割合が増加し,低温耐性が向上する.GPAT以外では,活性酸素種消去系遺伝子を導入した形質転換植物で低温耐性が向上することがわかっている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:55