リン酸化カスケード[phosphorylation cascade]

 タンパク質のリン酸化・脱リン酸化修飾による活性の調節は,広く生物界にみられる制御様式の一つである.とりわけ,プロテインキナーゼ(以下キナーゼと略記)が別のキナーゼをリン酸化・活性化して,活性化されたキナーゼがさらに別の酵素を活性化するような,将棋倒し式の関係をカスケード系と呼び,細胞内の情報(シグナル)伝達経路の主要な要素の一つとして研究が進められている.カスケード系が転写制御因子を活性化すれば,それは遺伝子の発現を誘導することを意味する.キナーゼと逆の働きをするプロテインホスファターゼもまた,リン酸化カスケードの構成要素として重要である.カスケードの研究は,古くは動物ホルモンのアドレナリンによって起動される肝臓のグリコーゲンの合成・分解の酵素レベルの制御系が有名であるが,近年になって,植物の光受容と光形態形成の分野や,環境応答・耐病性・ホルモン応答,さらには細胞の分裂・分化の制御に至るまで,様々な局面でキナーゼとカスケード系が細胞内の制御シグナルの伝達に利用されていることがわかってきている.また,植物ではMAPキナーゼカスケードが様々な応答経路に関わっている点も特筆に値する.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:48