マンガン安定化タンパク質[Mn-stabilizing protein]

  光化学系Ⅱ複合体のチラコイド内腔側,マンガンクラスター近傍に結合している水溶性タンパク質.psbO遺伝子によってコードされ,すべての酸素発生型光合成生物に存在し,33 kDa タンパク質と呼ばれることも多い.反応中心当たり1分子存在するが,緑色植物では2分子存在する報告もある.βシート構造に富む.等電点は5.2.真核生物ではpsbO遺伝子は核ゲノムにある.トリス, CaCl2 (≧1 M),ウレアなどの処理により18(16) kDaタンパク質(PsbQ), 24 (23) kDaタンパク質(PsbP)とともに光化学系Ⅱ複合体より可逆的に遊離する.複合体への結合に伴い構造変化が起こる.結合にはN末端16残基が必要である.また,CP47のチラコイド内腔側のループも結合に関与している.高濃度の塩素イオン(>100 mM)の存在下では33 kDa タンパク質がなくてもマンガンクラスターは安定に保持され,酸素発生活性を示す.塩素イオン濃度を下げるとクラスターは不安定化し,2個のマンガン原子が選択的に遊離した後,クラスターは破壊される.33 kDa タンパク質がマンガンクラスターを直接的に安定化しているのか,局所塩素イオン濃度維持により間接的に安定化に寄与しているのかについては不明.カルシウムの結合に関与しているという報告もあるが,光化学系Ⅱの結晶構造では33 kDaタンパク質はマンガン,あるいはカルシウムのいずれにも直接配位していない.
 33 kDa タンパク質がないと,S2以降のS状態遷移過程が進行し難くなる.PsbO遺伝子欠失変異シアノバクテリアは酸素発生能をもち,光独立栄養的に生育できるが,マンガンクラスターが不安定なため,暗中では徐々に酸素発生能を失う.光照射すると光活性化反応によりマンガンクラスターが構築され,酸素発生能が回復する.変異体は培地のカルシウム濃度が低いと独立栄養的に生育できなくなる.一方,緑藻クラミドモナスのPsbO遺伝子欠失変異体は光独立栄養的に生育できない.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:49