ニトロゲナーゼ類似酵素[nitrogenase-like enzymes]

ニトロゲナーゼと進化的起源を共有すると推察される酵素群.クロロフィル生合成系においては,クロロフィルaバクテリオクロロフィルaに代表される環状テトラピロールの基本骨格クロリン環およびバクテリオクロリン環を形成する反応を触媒する2つの酵素,光非依存型プロトクロロフィリドレダクターゼ (DPOR) とクロロフィリドaレダクターゼ (COR) があげられる.基本構造として,ATP依存的な還元コンポーネント(NifH類似タンパク質のホモ二量体)と,基質の還元反応を担う触媒コンポーネント(NifDとNifKの類似タンパク質のヘテロ4量体)から構成される.還元反応に必要とされる電子は,還元コンポーネントが保持する[4Fe-4S]クラスターから,触媒コンポーネントに保持される[4Fe-4S]クラスターを経由して基質に投入される.DPORとCORが触媒する2電子還元がこの酵素群の基本形と推察される.ニトロゲナーゼでは,触媒コンポーネントにおいて,[4Fe-4S]クラスターがPクラスター([8Fe-7S]クラスター)へ,基質がFeMo-コファクター[Mo-7Fe-9S-C-ホモクエン酸]-窒素分子複合体へと複雑化したことで,8電子による窒素分子還元が可能となったと考えられる.これら金属クラスターは,いずれも酸素によって速やかに破壊されてしまうため,ニトロゲナーゼ類似酵素の作用には嫌気的環境が必要とされる.ニトロゲナーゼの金属クラスター生合成系における,FeMoコファクター生合成の足場となるNifENもニトロゲナーゼ類似酵素である.また,ニトロゲナーゼ類似酵素をコードすると推察される遺伝子が,多くの原核生物のゲノムで見つかっているが,それらの機能は未だ不明のまま残されている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:46