コントロール解析[control coefficient analysis]

  ある代謝経路の速度(フラックス,J)は,その代謝を担う一連の酵素の諸性質と反応基質の濃度,さらには反応が進行する部位の化学的な環境によって決まる.これらの酵素はそれぞれが均等にその代謝経路のフラックスを決定づけているわけではない.一般的にいって,主経路から代謝を分岐させる最初の反応段階,自由エネルギー変化の大きな実質的に不可逆な反応段階,反応は可逆的であるが酵素の発現量あるいは低い反応速度が原因で生体内での反応速度が低い反応段階などを触媒する酵素がフラックスを決定する.
 アンチセンス法やRNA干渉法を使うことによって,特定の酵素の量を人為的に減少させることが可能である.これらの手法や,もし存在するなら特異的阻害剤を使って,個々の酵素のその代謝系全体のフラックスへの貢献度を評価する係数がコントロール係数(CJE=δJ/δE)である.この式は,ある酵素の活性の変化(δE)が代謝全体のフラックスの変化(δJ)に及ぼす程度を表している.ある酵素のCJE値が0に近ければその酵素は代謝系全体のフラックスの律速酵素ではなく,1に近ければ近いほど律速度が大きいことを意味する.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:12