脂肪酸転移反応を触媒する酵素を総称してアシルトランスフェラーゼと呼ぶ.主に,脂質の新規合成や修飾に関わるほか,タンパク質のアシル化反応を司る酵素も存在する.脂質の新規合成はホスファチジン酸の合成から始まるが,アシルACPまたはアシルCoAをアシル供与体とし,グリセロール3-リン酸のsn-1位にアシル基を転移するグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)と1-アシルグリセロール3-リン酸のsn-2位にアシル基を転移するリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)の2つがホスファチジン酸の生合成を司る酵素として重要である.植物細胞では,小胞体,プラスチド,ミトコンドリアにそれぞれこれらの酵素が存在する.一方,ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは,貯蔵脂質トリアシルグリセロールの生合成を司る重要な酵素で,小胞体と色素体に存在する.葉緑体のGPATは,緑葉の低温感受性を支配する遺伝子の一つとして知られている.