#freeze
*広域X線吸収微細構造[extended X-ray absorption fine structure] [#f929c024]
X線吸収スペクトルで吸収端の高エネルギー側に1keV以上にわたって現れる,徐々に減衰する波打ち構造. EXAFS (ExtendedX-ray Absorption Fine Structure)と呼ばれることが多い.X線を吸収した原子より放出された光電子波と,.この光電子波が近傍原子により一回後方散乱された光電子波との干渉作用に由来するとして定式化されている.波打ち構造は近傍原子の数,原子番号や近傍原子との距離などに依存する.スペクトルは複数原子による散乱の和であるので,フーリエ変換により特定原子の寄与を抽出し解析を行う.着目する原子の局所構造に関する情報が得られる.金属原子周りの局所構造解析に使われる.正確な構造解析には配位原子の情報が必要であるが,構造が未知の場合でも局所構造のわずかな変化を知ることができる.大まかな構造の推定も可能である.ただし,原子番号が近い元素(たとえばC, N, O)は区別できない.また,3Å以遠の原子の解析には向かない.生体金属タンパク質など希薄濃度試料の測定にはシンクロトロン放射光源が必須である.白色X線をシリコン111面などで分光後,試料に照射し波長スキャンを行う.吸収法は感度が低いため,試料からの蛍光X線をエネルギー分解能をもつ半導体検出器でとらえ,蛍光の収量変化として吸収スペクトルを測定する場合が多い.生体試料ではX線による損傷を避け,構造の熱的ゆらぎを最小とする目的で,通常,測定は低温(20K以下)で行われる.光化学系Ⅰの[[鉄硫黄クラスター]](センター)の鉄原子や酸素発生系の[[マンガンクラスター]]のMn原子の配位構造の研究などに使われてきた.特にマンガンクラスターの研究では他の測定法によっては得ることができない,Mn原子間の距離,MnとCa原子間の距離情報が得られている.
** 関連項目 [#if72ced0]
-[[X線吸収端近傍構造]]