#freeze
*カルシウム(酸素発生)[calcium (oxygen evolution)] [#n0b39912]
光合成酸素発生活性に必須の無機金属カチオン.光化学系Ⅱ膜標品では反応中心当たり2原子のカルシウム(Ca)が存在する.1つは[[酸素発生複合体]]に,他の1つはクロロフィル'''a'''/b結合タンパク質に結合している.クロロフィル'''a'''/b結合タンパク質がない[[光化学系Ⅱコア複合体]]では反応中心当たり1つのCaが存在する.結合は*24(23) kDaタンパク質により安定化されており,外部水溶液中のCaと交換しないが,24 kDa タンパク質の除去により交換可能となる. S&subsc(2);, S&subsc(3);状態では親和性が下がるため,24 kDa タンパク質除去標品を弱光照射すると遊離が促進される.低pH(~pH 3)ではCaが選択的に遊離する.Ca除去した標品では酸素発生活性が阻害されるが,Caにより活性が回復する.Ca濃度に依存した酸素発生回復の解析より得られるCa結合の見かけの親和性は, 24 (23) kDaタンパク質がない場合0.1 mM程度であるが,より高い,または低い親和性をもつ部位の存在も報告されている.Caは[[酸素発生複合体]]の構造の安定化のほか,水の酸化反応に直接関与している可能性も指摘されている.Ca結合部位には他のカチオンも結合可能であるが,Sr以外のカチオンはCaと機能的に代替できない.マンガン(Mn)およびCaの[[広域X線吸収微細構造]]スペクトルよりCaとMnの距離は約3.6~3.7Åと見積もられている.酸素発生複合体中でのCa結合部位の位置や配位構造に関する情報はほとんどない.Ca除去標品では[[マンガンクラスター]]の酸化はS&subsc(2);状態まで進行するが,S&subsc(3);へは反応が阻害される.生成したS&subsc(2);状態のマンガンクラスターの性質は24 (23) kDaタンパク質の結合や溶液中のキレーターなどにより大きく変化する.S&subsc(2);状態の標品をさらに光照射すると,g=2付近に特徴的なEPR信号が生成する.この信号は[[チロシンZ]]ラジカルとマンガンクラスター(または,有機ラジカル)の磁気相互作用に由来している.この信号はCa除去のため,通常EPR信号を示さないS&subsc(3);状態が信号を示すようになったものと考えられたこともあったが,現在では正常なS&subsc(3);とは異なる起源由来の信号であることがわかっている.
** 関連項目 [#if72ced0]
-[[酸素発生]]
-[[マンガンクラスターのEPR信号]]
-[[S状態モデル]]
-[[塩素(酸素発生)]]